とある青年の話をしよう。
彼には父親がいた。
ある晩、父は独白するように、彼に言った。
「俺は子供の頃、『タマゴ』を上手く発音することができなかった」
卵の殻を剥きながら言ったのだ。
「待ってくれ親父、タマゴだぞ。親父…タマゴだぞ?」
青年は卵の黄身が嫌いだったが、幸いにも白身は好きだった。
「そうだ息子よ、『タマゴ』をだ」
「じゃあ、なんて言ってたのさ?」
父は、蚊の鳴くような声で呟いた。
「…たまも」 青年は、そのときは鼻で嗤ったものだったが、されど噛み噛みの血脈は脈々と継承されていたことを、やがて知ることとなるのだった。
ほんと呂律回んねぇす…。
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