私は、一人称です。一人称なので一人称にしてみました。だけど、いつまでも、大好きな一人称のままじゃいられなくなってしまう。大学へ入って、就職をして、彼女ができて、嫁ができて、子供ができて、二人称から三人称へと。でも、それが嫌になったら、すべて捨てればいいのです。会社を辞めて、嫁と子供捨てて、また一人称の頃に戻ってみるのも悪くない。そして、いざ一人称になってみると、昔感じた一人称ではなかった。そうです。もうあの爺の金玉のように、愛せないものへとなっていたのでした。あの頃の一人称はもう戻ってきませんでした。焦燥へと移り行くこの景色を、ただぼんやり、あの縁日で口をパクパクさせる金魚のようにベンチに腰を下ろし、そうするしかなかったのでした。そんな私の足元へ長い影が伸び