「行こう、行こう、行こう、行こう―――」
私はただ望んだだけ。
この窓の外の世界を。
彼に連れて行ってほしかっただけ。
それは、少女たちの飛び降り自殺が相次いだ夏の終わりの物語。彼女たちは、突発的に廃墟と化したビルの屋上から空へと踊る。そして落下。待っているのは死。
学校も異なり、互いに交友関係もなく、一切の関係性と自殺の理由も見いだせぬまま不可解な自殺事件として報道される
なか、唯一、その関連を見いだした者がいた。
最高位の人形師で魔法使いになれなかった魔術師の蒼崎橙子、その人である。
むしろ、「理由がない」ことが共通点だ、と。
そして、浮遊と飛行の差違。
この連続殺人事件の捜索に乗り出したのは、万物の生の綻びこと死線を視る力「直死の磨眼」を持つ両儀式。
彼女には、この事件に関わらざるを得ない事情があった―――。
望まぬまま得た力により、虚空に舞う少女たちの幽霊をその瞳に捕らえる式は果たして、なにを思うのか。
たとえば、それはともすれば同じ道を辿っていたかもしれない同胞への哀れみ、または同族嫌悪。
たとえば、それは大切な存在を危うくする者への敵意。
あるいは、実に明確な殺意。
そんなものがないまぜになったまま、式は痛ましい現場となったビルへと向かう・・・・・・それが、幾重にも張り巡らされた罠への序章にすぎないことも知らずに。
第一の事件。第一の駒。その先に待っているのは無限螺旋。
今、終焉に向けてすべてが動きだす。
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