「アラヤ、何を求める」
「―――――真の叡智を」
「アラヤ、何処に求める」
「―――――ただ、己が内にのみ」
その男は悠久の時を経て、万物の霊長たる人間の営みに絶望し、その最期を見届けるために、万物の始まりにして終焉である「根源」を渇望して、渇望して、渇望して、死の蒐集を始めた。名を荒耶宗蓮という。
かつて、彼には遠い異国の学舎(まなびや)でひとりの好敵手がいた。名は蒼崎橙子。3つの原色のうち赤の称号を得た魔術師で封印指定を受けた最高位の人形師。ふたりは、いつかどこかでまみえる宿命だったのだ。
その場が、皮肉にも橙子の住む町に建つ、自身もが関わった螺旋の地だったのは、常に根源に至ろうとするモノを妨害すべく現れる「抑止力」のなせる技なのかは誰もが知る由がなく。
抑止力―――そのひとつは、霊長である人間が我が世を存続させるべく、身勝手に願う無意識の集合体。もうひとつは、人間の活動などお構いなしの、この地球が生き延びるための生存本能。
果たして、そのどちらかがどうさようしたかはわからぬまま、ふたつの不可解な事件が起き、無限に続くはずの日常から外れてしまった存在があった。その名は・・・・・・。
両儀の家に生れ落ちたからこそ得てしまった力と身体を持て余す、両儀式。
その肉に未知への扉を見いだす、荒耶宗蓮。
彼の企みに気付く、蒼崎橙子。
思わぬ事態に翻弄されながらも揺らがない思いを抱く、黒桐幹也。・・・・・・そして式と出逢い心惹かれる、臙条巴。
「偶然というのは神秘の隠語だ。知り得ない法則を隠すために偶然性という言葉が駆り出される。」
橙子の語る言葉の通り、今、誰も知らない、けれどすでに示された路に向かい、それぞれが突き進む。
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