今回扱うのは、第二百十五段。
冒頭部分を紹介すると…
平宣時朝臣、老いの後昔語に、「最明寺入道、ある宵の間によばるゝ事ありしに、『やがて。』と申しながら、直垂のなくて、とかくせし程に、また使きたりて、『直垂などのさふらはぬにや。夜なれば異樣〔粗末のもの〕なりとも疾く。』とありしかば、
鎌倉幕府の閣僚クラスであった人物が、老後の昔話に語った話。
最高権力者である執権の最明寺入道からある宵の時に来るよう呼ばれた。
正式の訪問着もなかったのだが、それでもいいからすぐ来いと言われて出かけてみると…
最高権力者とその臣下の関係にある者でありながら、全く飾らず盃を交わしていたという場面が語られる、実に微笑ましいエピソード。