九州の多くの公立高校では、「0限目」と呼ばれる朝の課外授業が行われてきました。ところが今、廃止する学校が増えています。何が起きているのでしょうか。
◆午前7時40分に開始
RKB町田有平記者
「朝の冷え込みが残る、午前7時半前です。1限目まではまだ1時間半ほどありますが、生徒たちが続々と登校してきています」
福岡市博多区の県立福岡高校。朝早くから登校してきた生徒が向かった先は部活動の朝練習ではなく、自分たちの教室です。
1年生のクラスで7時40分から始まった数学の授業。◇黒板には「0」と書かれています。1限目ではなく、「ゼロ限目」と呼ばれる朝課外です。
◆「半強制みたいでした」1970年代ごろには定着
福岡県ではなじみのある人も多いこの光景。1970年代ごろにはすでに県内のほとんどの公立高校で定着していたとみられています。塾や予備校に通うよりも安価で受験対策ができるといったメリットもありますが、かつて朝課外を経験した人の声は様々です。
大学1年男性(福岡県出身)
「半強制みたいな感じでした。出ない人もいましたけど。受験勉強に効果が、まったくないとは言わないですけど、そこまで大きな成果はなかったんじゃないかな」
50代男性(福岡県出身)
「当時、高校からちょっと遠かったので、朝早く起きて、西鉄電車に乗って行く、っていう。間に合わないときは父親に車で駅まで送ってもらって大変な思いしたなっていう記憶があります。朝は6時くらいに起きていました。私はあんまり真面目に勉学に取り組んでなかったので、効果的かどうかはちょっと分からないですね」
◆「よかった大阪で」 九州以外はほとんど実施せず
この「朝課外」、九州以外の地域ではほとんど実施していないといいます。街で聞いてみると。
大阪府出身
「朝課外は、ないですね。なかったです」
「かわいそう。朝早くから勉強するの大変やと思います。よかった大阪で。関西でよかったです」
愛知県出身
「課外授業は私の記憶にないですね。高校時代の登校時間は午前8時45分くらいだったと思います」
神奈川県出身
「朝があんまり強いほうではないので、ちょっと厳しいかなという気がします」
◆廃止する学校が増加
今、この朝課外を廃止する高校が増えています。福岡県教育委員会の調査によりますと、かつては県内のほぼすべての公立高校で実施されていた朝課外ですが、2023年度は、91校中49校と半数近くまで減少。特にこの3年間で23校がとり止めていて、福岡市内では修猷館高校が去年、城南高校は3年前に廃止しました。理由として、生徒の負担軽減や教職員の働き方改革のほか、コロナ禍でタブレット学習が定着し学習方法の選択肢が広がったことを挙げています。
◆続けている高校 理由は
継続している高校もただ慣習として続けているわけではなく、毎年、必要性を検討しているそうです。
朝課外を続けている福岡高校 藤崎忠進路部長
「本校でも廃止を含めて検討はしましたが、各教科から選択肢のひとつとして生徒たちの力をつける場を残したいというのがありました。さらに今後検討していくことにはなると思います」
◆熊本県では今年度、全ての公立高校で廃止
福岡のお隣・熊本県でもかつては、ほぼすべての公立高校で朝課外が実施されていました。今年1月時点でも約半数が継続していましたが、今年度から全校で一斉に廃止しました。
熊本県教育委員会 前田浩志高等教育課長
「何十年と続いていることなので、各学校でやめるのは難しいという話を聞いていたので、学習指導要領の改正、新型コロナによるツールの普及などを考えると、このタイミングで県全体でやっていこうと廃止を進めました」
◆朝課外やめたら「居眠りが減った」
朝課外をやめて、メリットについてこう話します。
熊本県教育委員会 前田浩志高等教育課長
「居眠りする生徒が減ったと聞いています。よりしっかりメリハリをつけて生活してもらって、より元気に高校生活を送ってもらえればいいなと思います。結果は始めたばかりなので実際に『それで学力低下しないのか?』という声は引き続きありますけど、そこは私たちなりに努力をして、授業の中でちゃんと生徒たちに理解を図れるように、家庭学習で予習復習をしっかりやって、っていうサイクルを作ります」
◆選択制にした高校では「学力向上につながる」生徒の声も
朝課外を継続する福岡県の福岡高校では、5年前から受講したい科目だけを選べるようにしました。そのため、参加している生徒たちからは朝課外に賛成する声が多く聞かれました。
福岡高校の生徒
「授業の復習や習っていないところができて、朝早く起きる習慣もつくので、休日もだらだらしないで済むかな」
福岡高校の生徒
「自分で勉強する時間ってなかなかとりにくいので、半強制的にでも授業みたいな感じで受けられたら学力向上につながるかなって思ってます」
記者
Qストイックですね?
「いやまあ…行きたい大学がけっこう上のところなんで」
福岡高校の生徒
「中学より起きる時間は早くはなりましたけど、そんなにきつくはないですね。慣れというか」
働き方改革やコロナ禍を経て生徒と教職員の意識が変わるなか、過渡期を迎えている「朝課外」 教育現場の試行錯誤が続いています。
オリジナル記事を読む
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/827200