福岡県北九州市の「到津の森公園」は年間に37万人が訪れる人気の動物園ですが、長く続く動物園を維持するために市民が参加する仕組みで運営されています。そのボランティアが今、新たな問題に直面しています。
◆“市民参加の動物園”として再開
北九州市小倉北区にある「到津の森公園」では80種類の動物が飼育され、かわいらしい姿を見ようと年間約37万人が訪れます。開園時間の午前9時、動物たちのエサの準備をしているのは、飼育員ではありません。市民によるボランティアです。
ボランティア「これは、フクロテナガザルのエサです」
「到津の森公園」は、かつては「到津遊園」として民間企業が経営していました。しかし経営難に陥り、2000年に閉園に追い込まれました。運営を引き継いだ北九州市は、多くの市民からの声を受け、再開に向けて動きます。動物たちのエサ係や園内のガイドといったボランティアを市民に募り、2年後の2002年に「到津の森公園」がオープンしました。市民を取り込んで営業を再開させるやり方は全国的にも珍しく、各地から視察団も訪れました。
◆「私の作ったエサを食べてくれる!」
「到津の森公園」の開園時から運営に携わっている山田恵子さんです。
ボランティアグループ「森の仲間たち」会長 山田恵子さん「(来る時に)猿山の前を通ってくるんですけれど『おはよう、今からエサを切ってくるからね』と必ず声をかけて。帰りには『今切ったからね、おいしく食べてね』とか言いながら」
その言葉が通じているのか、サルたちはおいしそうに野菜や果物を頬張っています。
山田恵子さん「(初めて見たときは)すごく感動しました。私の作ったのを食べてくれていると思ったらうれしくて」
◆飼育員の7倍もの人数がボランティアに
現在は16歳の高校生から88歳まで、飼育員の約7倍にあたる134人のボランティアが活動しています。
ボランティア歴20年の田上宜子さん「トラさんに会おうかなとか、キリンさんと話そうかな、とか。話したって返事はしてくれませんけどね」
ボランティアの中山恵子さん「2人で歩きながらテナガザルのところに行ったら、こっちをボーと見ているんです。『何か悩みごとがあるんですか?』と聞いたんだよね」
◆開園から21年、ボランティアが高齢化
ボランティアによって支えられている到津の森公園。開園から21年が経ち、新たな課題に直面しています。それは「ボランティアの高齢化」です。134人のうち約7割が60代以上です。
「森の仲間たち」会長 山田恵子さん「ご高齢になってくるし、辞めていく方もたくさんいるし、なかなか仕事とか家のこととかね……ボランティアなので」
山田桂子さん「私たちは素人なのに、させてもらっていることがすごくありがたくて」
獣医師「こちらからしたら、すごくありがたいですよ。『きょう、ボランティアさん休みの日だった!』となると、みんなてんてこまいになって。すごい助かっています」
10年ほど前から、年4回の説明会を開きボランティアを募っていますが、慢性的な人員不足が続いています。市民に愛される動物園は、これからも市民の力を必要としています。
オリジナル記事を読む
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/833614