中学校に通う生徒たちは、普段どんな昼食を食べているのでしょうか。家庭から弁当を持参するか、デリバリー給食か、または全員が同じものを食べる全員制給食か。自治体によって様々です。自治体の判断はなぜ、違うのでしょうか。
◆「全員制給食」に移行へ リハーサルを行った中学校
12月7日、福岡県太宰府市の公立中学校で全員制給食の実施に向けたリハーサルが行われました。
配膳係の生徒
「配分するのが難しいです」
太宰府市では、前の市長が「全員制の完全給食実施」を公約に掲げて当選したものの財源不足などを理由に撤回し、市議会の不信任決議で失職しました。今の市長の2期目になって、ようやく来年1月10日から全員制の給食が始まることになりました。
生徒は
「今までランチサービスを頼んで食べていました。みんな一緒のものを食べてるって感じがして良いなと思います」
「美味しいです。弁当じゃなくなるので親の負担が減るかなと思います」
◆献立は1食346円を目安に
給食の献立は、1食346円を目安に各中学校の栄養士が考えます。
学業院中学校 高尾美由紀 栄養士
「物価の高騰が懸念されてるところではあるんですけれども、栄養素を落とさないように調達するところを工夫しているところです」
◆市長「悲願でした」
太宰府市 楠田大蔵市長
「太宰府市にとって悲願でもありましたし、一定程度期待に応えられたかなと思っております。何よりまずは子供達が同じものを一緒に準備をして一緒に片付けて、食べて、栄養素を確保して、健全にすくすくとのびのびと育ってもらいたい」
◆「選択制給食」を実施の自治体は
RKB三浦良介記者
「福岡県春日市の公立中学校では、家庭からの弁当と業者に注文する弁当の『選択制給食』が実施されています」
福岡県内60市町村のうち、2024年度も選択制給食なのは、春日市、大野城市、宇美町、須恵町、久山町の5つ。春日市の中学校は弁当形式のデリバリー給食を採用しています。1食あたり260円で、利用率は平均60%です。
◆生徒たちの気持ちは
生徒は
「デリバリー給食は温かいし美味しいです」
「栄養バランスがしっかり考えられているのでいいと思います」
「(弁当と給食では)弁当がいい!お母さんが作るから好きな物を入れてくれる」
「今月は給食を頼み忘れて弁当です。お母さんが、5時に起きて作ってて大変だと言ってました」
「最近パンにしました。カレーパンが好きだから」
「弁当が作れないときは『パンを注文して』って親からお金をもらっています」
◆学校は「自分たちの食べる物を自分たちで選ぶ」メリット
春日南中学校 安永虎吉教頭
「自分たちの食べる物を自分たちで選ぶということで自己管理能力を育成することができます。配膳にも時間がかかりませんし、片付けにも時間がかからない。そういったメリットがあると思います。」
春日市教育総務課 小嶋健朗課長補佐
「アンケート結果の中にも家庭からの弁当の良さを生かしたいといった意見もありましたので、多様なニーズを反映させる方式として選択制をとっています」
◆専門家「学校給食の役割考えて」
一方、専門家は、多様性よりも学校給食の役割を考えるべきだと指摘します。
東京都立大学 人文社会学部 阿部彩教授
「多様性を重んじるというのは良いんですけれども、その時に十分な栄養のある物を持って来られない子たちにどんな手立てをするのかということも一緒に考えなければいけないわけで、学校にいる間の食事を保障するというのは義務教育の趣旨からしても必ずやらなければいけないことかなと思います。自治体によっては夏休みに給食を提供したり、朝ご飯を提供したりという先駆的なところもあります」
◆保護者からは全員給食の実施を求める声も
チラシを配る保護者
「中学校での全員給食実施に向けて活動しております。どうぞよろしくお願いします」
春日市では保護者の一部が全員制の給食を求め、声を上げています。街頭に立って理解を求めるチラシを配布していました。こうした保護者の活動は、2019年に大野城市から始まり、2023年からは、春日市や久山町にも広がっています。
中学校のより良い給食を考える会@大野城 林田加奈子 共同代表
「この活動が広がり、中学生に安心して全員に食べてもらえる給食が実現できたらなと考えています」
大野城市民
「大人の責任においてちゃんと栄養を考えたものを全員に提供できることの方が大事だと思います」
春日市民
「私は福岡市で育っていたので給食は当たり前と思っていたのに、春日市では中学生になったら給食じゃないというのを聞いてびっくりしました」
◆「全員制給食」 実施の課題とは
春日市に改めて聞いたところ、全員給食の実施には課題もあると話します。
記者「保護者からは全員制を求める声も上がっていますが?」
春日市 教育総務課 小嶋健朗 課長補佐
「全員給食をする上で、施設の整備や実施体制、人の配置、そういう課題等は多くあります。。今後も国の動きを注視しながら研究を進めていきたい」
太宰府市のケースを見ても、新たに全員制の完全給食を実施するには財源の確保という課題があります。これが選択制給食の自治体の腰を重くしている側面もあるようです。
オリジナル記事を読む
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/900108