福岡市を流れる室見川の「シロウオ漁」は、春の訪れを告げる風物詩として知られています。しかし近年漁獲量が減少し、今年は2年連続で休漁となりました。生きたまま口に流し込む躍り食いや天ぷらで食卓にも春を届けてくれたシロウオ。伝統の漁の現場で一体なにが起きているのでしょうか。
◆シロウオ漁が行われてきた福岡市の室見川
福岡市の西部を流れる室見川。2月上旬、シロウオの産卵場所を整備するため、漁業関係者や大学の関係者、地元住民など約120人が鍬やスコップを使って砂の下に埋もれている石を掘り起こしていました。
参加した人
「楽しいです。卵産んでくれたらいいな」
「子供たちが大人になった時に、もうちょっと今の現状よりも良くなってたらいいかなと思います」
◆体長5センチほどハゼ科の魚
シロウオは体長5センチほどのハゼ科の魚で、2月中旬ごろに海から遡上し、川底の石の下に産卵します。江戸時代から300年以上続くとされる室見川のシロウオ漁は、福岡に春の訪れを告げる風物詩として親しまれてきました。生きたまま流し込む「躍り食い」や天ぷらなどが有名です。
◆漁獲量は11年で10分1に
しかし、漁は今年も中止となりました。2年連続の休漁です。
室見川シロウオ組合 組合長 小石原義彦さん
「どうしようもない。漁をしようと思っても魚がおらんけん」
室見川のシロウオの漁獲量は、2011年には250キロありましたが、その後減少し、2022年には、わずか25キロになりました。
◆専門家は「危機的な状況が続いている」
福岡大学 水工学研究所 伊豫岡宏樹助教授
「シロウオは本当にここ数年危機的な状況が続いていて、すごく少ないです。地域の人たちに川に目を向けてほしい、環境について考えてもらいたい」
シロウオはなぜ獲れなくなったのか。福岡大学の伊豫岡宏樹助教授によると、複数の環境要因が考えられるといいます。
◆河道の形状が変わった
まず、河川の流水が流れ下る部分である河道の形状が変わったことです。河道の拡幅や直線化によって流速が減少。川の流れが緩やかになると、本来海へ流れるはずの砂が堆積します。
石が砂に埋もれてしまうため、産卵場所がなくなってしまうのです。
◆自然海岸が減った
そして、海の問題です。博多湾では開発に伴い、人工の海岸が増加しました。自然海岸の割合は、1945?1950に78.3%でしたが、1990以降には56.0%になっています。その結果、浅瀬が減少。シロウオは海の浅いところで育つため、これが影響している可能性もあります。
◆川に産卵場所を作るだけでは回復しない
近年は、海水温上昇も問題になっていますが、伊豫岡宏樹助教授は、川に産卵場所を作るだけでシロウオの漁獲量が回復するわけではないと話します。
福岡大学 水工学研究所 伊豫岡宏樹助教授
「川だけの問題を解決していくのでは足りないなという風に私は最近考えています、海で育つ期間も海の環境も整ってないといけない。行政も一緒に、どういう取り組みをしていくべきか考えていかないといけないと思います」
室見川の春の風物詩を次世代に残していくためには、地道な取り組みだけでなく、生育環境の抜本的な見直しが求められています。
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https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/994282